受精後８週から１０週の椎弓の骨核が発生し核癒合が起こる時期に障害が起こると椎弓の形成異常になります。

椎弓の形成異常は椎体よりも重い障害になります。

椎弓の骨核が出来なかったり、うまくくっつかない障害の事です。

脊椎披裂(二分脊椎)というのは椎弓根が後ろで十分に閉じないため、
脊柱管が後ろで開いた状態の事を言います。

脊柱管が開いた状態ということは、
脊髄など神経障害が起こる可能性が高く、
脊損と同じ状態になるためよろしくありません。

主にＬ５－Ｓ１間の腰仙移行部が好発部位となっています。

また、脊椎披裂には潜在性と健在性があります。

●潜在性
潜在性脊椎披裂というのは肉眼では異常がないがレントゲンを撮ると椎弓が後ろで繋がっていないのが分かる脊椎披裂のことです。
この潜在性脊椎披裂は疫学的に成人の8～15％にあると言われていて、
全脊椎披裂の90％異常が潜在性脊椎披裂だと言われています。

●健在性
健在性脊椎披裂というのは肉眼で分かるくらい背中が大きく盛り上がる状態の事で、「髄膜瘤」と「脊髄髄膜瘤」の２種類あります。

髄膜瘤は隆起部分に脳脊髄液のみ存在します。

脊髄髄膜瘤は隆起部分に神経も含んでいる状態の事です。
 

もちろん髄膜瘤よりも脊髄髄膜瘤の方が重い症状になるのですが、
脊髄髄膜瘤の方が割合的に多いのが現状です。（髄膜瘤：脊髄髄膜瘤=１：９）

疫学的には１万人に１～２人とされています。

合併症については潜在性脊椎披裂はほとんどなく髄膜瘤も少ないのに対し、
脊髄髄膜瘤は多くあります。

では合併症にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

①脂肪腫(脊髄脂肪髄膜瘤)

脊椎披裂(二分脊椎)というのは椎弓が二分に分離していて閉じていないため、
皮下脂肪が増殖して不安定な脊椎を安定させようとする自然の摂理で起こります。
結果的に背中にぷよぷよしたコブが出来るようになります。
これが脂肪腫です。

②脊髄正中離開症

脊髄正中離開症というのは脂肪腫が進行してしまった状態の事で、
脂肪腫が脊髄まで割り込んでしまって二分してしまいます。
結果的に脊髄が離開し、さらに奥にある椎体と癒着を起こし、
骨棘が形成されてしまいます。

結果的に脂肪腫や骨棘が脊髄を圧迫し、
さらに脊髄が二分されるため高度な神経障害を引き起こしてしまいます。

⑥脊髄係留症候群

脊髄係留症候群というのは脊髄上昇や過緊張性終糸などによって、
脊髄が足方に引っ張られることにより起こる神経症状の事です。

脊髄上昇というのは脊髄が上昇しているように見えるため言われているのですが、どういうことかと言いますと、
脊髄の先端は脊髄円錐と呼ばれていますが、出生時は脊髄円錐はＬ５に位置していますが成人になるとＬ１に位置しているため、Ｌ５からＬ１へ上昇していると見えます。

なぜかと言うと脊髄と脊椎は成長します。
脊髄よりも脊椎の方が成長が早いのです。
脊椎の方が成長が早いという事は脊髄よりも足方に伸びるという事です。

結果的に脊髄が脊椎より上昇しているように見える現象の事です。
(脊椎の方が伸びて下がっていくので脊髄が上がって見えるのです）

この脊髄が上がっていくのを阻害することを脊髄係留症候群と言います。
(脊髄が下の方で留め置かれてしまう現象です)

この脊髄係留症候群が生じると脊髄に過剰な伸延力(縦に伸ばす力)が働き、
神経障害につながります。

成長期に足が痛いとか痺れるなど起こる事が多くあります。

原因としては脊髄正中離開症や脂肪腫、
後で説明しますが過緊張性終糸があります。

脊髄正中離開症や脂肪腫のようにある部分で皮下脂肪が脊髄に食い込まれているため、脊髄は上に上がりたくても上がれない状態に陥ることになります。

画像を見るとわかるように皮下脂肪が脊柱管と繋がっています。
よって脊髄は脂肪腫によって杭を打たれた状態になるため上に上がらなくなります。

もう一つの脊髄係留症候群の原因とされているのが過緊張性終糸です。

終糸というのは脊髄の下端(脊髄円錐)から出ている糸のようなものです。

この終糸が硬膜の内側から張り付いていて、その硬膜の下端から脊髄硬膜糸という糸が尾骨に付着しています。

その終糸の緊張が過剰になり伸びてくれないことを過緊張性終糸と言います。

このように終糸が伸びないため脊髄が上昇出来ず、
脊髄係留症候群が生じて子供の不定愁訴につながります。
例えば「成長痛(下肢や膝の痛み）」「落ち着かない」「おねしょが治らない」など。

治療方針としては基本的には経過観察となります。