肩は前後左右に大きな可動域が必要な場所です。
よって動きやすいように肩関節は非常に溝が浅くなっています。

溝が浅いという事は脱臼のリスクもあります。
現実的に人間の中で最も脱臼しやすい関節が肩関節と言われています。

■肩の筋肉

溝が浅い構造をサポートするために４つの筋肉に役割が与えられました。
それが、
１、棘上筋
２、棘下筋
３、肩甲下筋
４、小円筋
です。

この４つの筋肉の事を回旋鍵板(腱板)やローテーターカフ(カフ)と呼びます。

ではそれぞれの筋肉がどこに付いているのか見ていきましょう。

このイラストは腱の断面図です。
通常、腱の断面を見ると「(惰)円形」ですが、
回旋腱板を断面で見ると「板状」になっています。だから腱板と言います。
この様に板状にして肩関節を覆うように作られました。

しかし、この構造に無理があります。
なぜなら(惰)円形でなければならない腱を無理やり板状に伸ばしているためです。
でもそうしなければ肩の安定性を保てなかった苦渋の選択を人間の身体は自然と作り上げているのが面白い。

回旋腱板はローテーターカフとも呼ばれています。
ローテーターとは訳すと「回旋させるもの」です。

棘下筋や小円筋は肩関節を外旋、肩甲下筋は肩関節を内旋する働きがあります。
棘上筋は回旋には関わりませんが４つの筋肉のうち３つが回旋に関わっている筋肉なのでローテーターと言われています。

■烏口肩峰アーチ

肩峰と烏口突起を繋ぐ烏口肩峰靭帯があります。
この烏口肩峰靭帯と肩峰の状態をみると三角屋根のような形になっています。
このように三角屋根状(烏口肩峰アーチ)にしておくと安定します。

この烏口肩峰アーチの下に上腕骨頭があります。
腕を床に付けるなどすると上腕骨頭は頭方に移動しますが、
この移動を烏口肩峰アーチで止める役割を果たしています。

■肩峰下関節(第２肩関節)

烏口肩峰アーチと上腕骨頭との間に棘上筋などの筋肉があり、
本来の滑膜関節ではありませんが関節のような役割を果たすことから、
第２肩関節と呼ばれたり肩峰の下にあるので肩峰下関節とも呼ばれています。

ちなみに本当の肩関節(第１肩関節)は上腕骨頭と肩甲骨の間になります。

話を肩峰下関節(第２肩関節)に戻していきます。
肩峰下関節(第２肩関節)の中にあるものは【肩峰下包】と【棘上筋腱】です。
いずれも負担が大きく障害の原因になりやすい特徴があります。

なぜなら人間は手を下につく動作が多くありますが、元々関節としてデザインされていないスペース(肩峰下関節)に圧力がかかることで【肩峰下包】と【棘上筋腱】に負担がかかってしまいます。

肩峰下包というのは肩峰の下にある袋のことで人体最大の滑液包と言われています。
滑液包というのは滑液が入った袋で骨と骨がぶつかりがちな所に存在しています。

肩が一番多く存在し膝や股関節のように良く動く場所にも多く存在しています。

そもそも滑液包はクッションの役割ですので、
肩に最大の滑液包があるということは相当物理的な負担が大きい場所だということです。

そのような最大の滑液包である肩峰下包があっても棘上筋腱に圧迫がかかってしまうケースがあります。

棘上筋腱の負担が強いということを理解する上で知っておくべき知識があります。

それが鎖骨です。

鎖骨は猫にはありません。

４つ足の動物には鎖骨がありません。

なぜなら鎖骨の必要がないからです。

猫や犬は４つ足のため体幹が横になっています。
普通に立っているだけで肩甲骨に上腕骨がハマる構造なので鎖骨がなくても問題がありません。

しかし、人間は２本足で立つため鎖骨が無ければ重力で腕が落ちてしまいます。
そうならないため鎖骨が必要だったのです。

このように必要なためにできた鎖骨が棘上筋腱にとっては圧迫される原因になってしまいました。
通常、筋肉というのは一方は骨と密着しているがもう一方はフリーになっています。
しかし、棘下筋だけは両方から骨と密着させられています。

よって常に上下の骨に挟まれた棘上筋腱は恒常的に絞扼された状態になっています。

さらに棘上筋腱が辛い状態になる理由として血行不良があります。
なぜなら筋肉に対して腱部分の割合が人体中最大だからです。

通常、筋肉の全長に対して腱の割合は５～１０％と言われていますが、
棘上筋については筋肉に対して腱の割合は３０％以上と言われています。

理由は腱板だからです。
元々、腱である必要のなかったところに無理やり平たくて長い腱になった為
腱の部分が伸びたと言われています。

では何故、筋肉に対して腱の割合が大きいと血行不良になるのかというと、
腱は白い組織のため栄養やガス交換が滞りがちです。
よって退行変性に陥りやすい構造になっています。(遠位であればあるほど)

■棘上筋腱が障害を起こしやすい理由のまとめ

・棘上筋腱は骨に挟まれて絞扼されることで顕微損傷に陥りやすい。
・棘上筋腱は腱の割合(白い組織)が多いため血行不良になり退行変性になりやすい。

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