さて、脊柱(背骨)についてのお話になります。

そもそも脊柱の役割ってなんだと思いますか？

脊柱というのは右のイラストのように首から骨盤までの骨の事です。

首の骨は７つ、胸の骨は１２つ、腰の骨は５つで成り立っています。
その骨の事を椎骨と呼びます。

脊柱の役割は体幹の支柱として姿勢を保持したり活動を可能にすることです。
 

脊柱の機能は

１、支持性
２、可動性
３、保護(脊柱の中にある脊髄や神経組織を保護しています)

があります。

しかし、上記の３つの機能は両立しにくい。

なぜなら可動性として脊柱を動かそうと思えば不安定になるし、支持性や保護としての役割を果たすべく安定させようと思えば動かなくなるという矛盾があるのです。

でもどちらも大切な機能です。

よってさまざなまトラブルが発生してしまうのです。

例えば先ほどお話をした背骨には首の骨(頸椎)が７つ、胸の骨(胸椎)が１２つ、腰の骨(腰椎)が５つあります。

その椎骨と椎骨の間には椎間板という白い組織があります。

椎間板と聞くと椎間板ヘルニアが有名ですがその椎間板の事です。
※椎間板というのは線維輪と髄核でできているクッション性の高い組織のことです。
※線維輪はコラーゲン、髄核はプロテオグリカンを豊富に含んでいて車のタイヤの構造に似ている。

ゴムの部分が線維輪、空気の部分が髄核をイメージするとわかりやすい。
このタイヤのような構造にすることで強靭でクッション性の高い組織になっている。

でも「白い組織」と聞いてもピンときませんよね。

白い組織というのは血管の無い組織の事です。
さらっと言いましたがとても重要な事です。
血管が無いという事は酸素や栄養素などが送られてこないという事です。
 

そもそも白い組織というのは強靭な組織なので損傷しずらいのですが、
いったん損傷してしまうと治りにくい性質があるのです。

靭帯とか腱も白い組織なのですが、
よくスポーツ選手で膝の十字靭帯を損傷して引退してしまったという話は聞くと思います。
肉離れでは引退には追い込まれませんよね。

そう筋肉には血管が通っているので、
たとえ損傷しても酸素と栄養素が通っているので回復してくるのです。

靭帯や腱、椎間板は白い組織なので損傷したら元に戻らないのです。

では、なぜ白い組織には血管が通っていないと思いますか？

それは白い組織があるところというのは人間の身体の中で強い力が働く場所にあるからです。

血管というのは脈を打つたびに波を打つので柔軟な組織な反面脆い組織です。
強い力がかかる場所に血管があるとすぐに切れてしまうことになるのです。

だから白い組織の場所には血管がないようにできているのです。

でもここで一つ疑問が出てきます。

白い組織も細胞からできているので細胞は生きている以上、
酸素や栄養素は必要になります。二酸化酸素の排出は必要になります。

ガス交換や栄養交換は必要になります。

ガス交換というのは酸素をもらい二酸化炭素を排出すること。
栄養交換というのは栄養をもらい老廃物を排出することです。

では白い組織はどのように二つの交換をしているのでしょうか？

それは動きによって行っています。

専門用語でいうとインビビションと言いますが、
スポンジ効果とも言います。

インビビションのことをスポンジに例えてわかりやすくいうと、
墨の染みこんだスポンジを水槽につけると墨は24時間ほどで周りの水に溶けだしますが、スポンジを握ったり放したりを繰り返すことで、たちどころに墨は周りの出てきて周りから新鮮な水が入ってきますよね。

このような仕組みなので白い組織というのは動かないと死んでしまうのです。
逆に言うと動くことで白い組織は生きながらえていることになります。

でもジレンマがあります。

私たちの生活の中で椎間板ヘルニアになる方は多くいらっしゃいますが椎間板というのは白い組織です。
しかし椎間板ヘルニアで腰痛が発生した場合、痛みにより動きが制限してしまうことがあります。

動かない状態が続くことで先ほどのガス交換や栄養交換がうまくいかなくなり、
白い組織の損傷の修復が出来なくなり慢性的な筋骨格系疾患の原因になってしまうのです。

靭帯も白い組織です。
ということは強い力が働くところにあります。
今回は脊柱の機能解剖のお話なので背骨の周りにある靭帯について説明します。

脊柱管より前にある靭帯を前部靭帯郡といい、
前部靭帯郡には前縦靭帯(ALL)と後縦靭帯(PLL)の２本があります。

脊柱管より後ろにある靭帯を後部靭帯郡といい棘上靭帯と棘間靭帯と黄色靭帯の３本があります。

この中で重要なのが黄色靭帯です。

黄色靭帯は高齢になるとしばしば肥厚して脊柱管狭窄症の原因になるからです。

なぜ黄色靭帯が脊柱管狭窄症の原因になるのか？

それは日常的に座るとき猫背になるからです。
猫背姿勢は脊柱の後部に負荷がかかり引っ張られます。
(この猫背姿勢の事をスラウチ姿勢と言います。)

よって黄色靭帯は肥厚しやすくなってしまいます。

黄色靭帯は脊柱管の中にあります。脊柱管の中には脊髄神経があります。
黄色靭帯が肥厚することで脊髄神経を圧迫することになってしまいます。

そうなってしまうとなかなか治らなくなってしまいます。

脊髄神経や馬尾神経は何層にもなって保護されています。

一番内側にあるのがくも膜下腔です。くも膜下腔の外側にくも膜があります。
その間に脳脊髄液があります。

イメージとしては脊髄神経や馬尾神経は脳脊髄液に満たされていて水の中に浮いているような構造になっています。

さらに、くも膜の外側に硬膜があり、その外に硬膜外腔というスペースがあります。
硬膜外腔の中には脂肪組織と脊柱管内静脈叢があります。

このクッション性のある脂肪の中に血管が入っている構造がスゴイ。

血管はパイプ状になっています。パイプ状の構造の物は圧に強い。
その血管を脂肪組織で保護している構造になっています。

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