これまで腰椎症や頚椎症でも説明しましたが、
変形性膝関節症の原因はＯＡからなります。

ＯＡが腰に生じれば腰椎症、首に生じれば頚椎症、膝に生じれば変形性膝関節症となるわけです。

ＯＡというのは変形があったり、無理な動きをしたり、年を取ることでコラーゲンが失われてきて軟骨が削れてきてきます。

軟骨が削れているうちは痛くないのですが削れきってしまってしまうことで、その下にある骨である軟骨下骨質同士がぶつかることで痛みが生じてくる。

痛みと同時に骨同士がぶつかることで、防衛反応として骨棘が形成されます。

骨棘が出来てくると骨棘同士がぶつかるようになり関節の可動域が狭くなります。
このようなことをＯＡと呼びます。

繰り返しになりますが、このＯＡが膝に起こると変形性膝関節症となります。

今回の章は「膝」に特有な問題を中心に説明をしていきたいと思います。

膝は内側が削れるケースが多々あります。
特にオーバーウエイト気味の中高年の女性に変形性膝関節症は多いのも特徴の一つです。

なぜか？

正座をすることが女性の方が多かったり、男性より骨が弱いというのも原因と言われています。
また変形性膝関節症になると軟骨下骨質が触れ合うことで痛みが生じて膝も変形します。
 

このように変形することを内反変形(Ｏ脚)と言われています。
日本人の膝関節症の90％以上は内反変形と言われています。

■頻度

変形性膝関節症は高齢者の腰背中痛とならんでもっとも多い骨・関節疾患と言われています。

■種類
種類としては明らかな原因が無い一次性と明らかな原因がある二次性があります。
圧倒的に多いのが一次性です。原因が無いので高齢のための老化現象とも言われています。

他のＯＡにも共通した一般的な症状として初期段階ではこわばりを感じます。

進行するにつれて痛みが生じます。

どういう時に痛みが生じるかというと運動開始時痛(朝起きてチクッと痛い)が一番最初に出る症状で歩いていると痛みが消失します。※
※摩擦熱によって関節液の粘度が下がります。(関節液がサラサラの状態)
粘度が下がることで関節の動きがスムーズになってくるので痛みが一旦引きます。

そのうち歩いている時に消失していた痛みが歩き続けることによってまた痛むようになります。
放置していると歩いていなくても痛くなります。(骨同士が擦れている段階)

■膝関節症の特徴

●膝関節の内側に痛みが生じます。
●膝蓋骨の周辺も膝蓋軟骨の摩耗によって痛みが生じます。
●大腿全体に鈍い痛みが生じます。

変形性膝関節症になると膝を完全伸展できなくなります。その状態で歩くことで大腿四頭筋が疲れて筋肉が緊張し痛みが生じます。

・関節包の肥厚
膝関節になることで関節包や滑膜も肥厚してきます。

・嵌頓症状(ロッキング)
稀に半月板の欠片や剥離した骨、肥厚した滑膜ひだなどが膝関節に挟まって軽度屈曲位から全く動かなくなります。

・関節水症
いわゆる膝に水が溜まるという症状の事で全膝関節症の症例の約30％と言われていて運動後に起こることが多いです。

・変形
スクリューホームが出来ないために起こる屈曲変形や内側裂隙が小さくなる内反変形があります。
このように同じような状態が続くことで筋肉に順応性短縮が起こり動かなくなります。
長い時間かけて動かなくなった筋肉は時間をかけなければ動かなくなりません。

通常、膝のＸ線撮影をする場合は仰向けで膝を正面から撮影します。
ＯＡを疑う場合はもう２枚撮影(ローゼンバーグ肢位・軸射撮影)しておくことが望ましいと言われています。

・所見
レントゲンにどのようなものが写るかというと他のＯＡ所見と共通になりますが、イラストのように軟骨が無くなっているわけなので関節裂隙が狭小化しています。
骨同士がぶつかり合うと反応性骨増殖で軟骨下の骨硬化が現れ、それがひどくなると骨棘が出てきます。

膝に特有の所見としては軟骨や半月や靭帯の欠片(遊離体)が写ります。
脛骨の側方(外側)が亜脱臼します。
結果として膝外側角が増大し内反変形が進行します。

では実際のレントゲン画像を見てみましょう。

向かって左が正常で右が変形性膝関節症です。

一目で分かるように右の変形性膝関節症の画像には骨硬化が見られ関節裂隙も狭小しています。
骨棘も出ています。

変形性膝関節症の治療法の基本は保存療法です。
具体的には正座を避けることが一番大切です。

■杖
歩く時には杖をつくことで負担を３０％前後軽減させることが出来ます。

このような杖が良いでしょう。

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ちなみに杖は健側に持ちます。

■歩き方
ゆっくり歩くのがとても有効的です。

■運動のメリット
運動をすることで大腿四頭筋の筋力を維持させることが出来ます。
寝たきりや肥満の予防にも効果的です。
膝に痛みがある場合には下記のように膝に負担をかけない大腿四頭筋の運動が効果的です。

例えば自転車や水泳がおススメです。

自転車や水泳できない場合は座ったの状態で膝を伸ばしてキープさせたり、
仰向けで足を挙げることで大腿四頭筋が鍛えられます。

■荷重を外側コンパートメントへ移動させる方法

変形性膝関節症は膝の内側に起こることが多いため、内側に負担がかからないように、楔形の足底挿板を足の外側に敷くことで内側の負担を減らす効果が期待できます。

基本的に一日中つけます。(歩かない時や寝ている時、座っているときは不要)

最初は1～2時間くらいから始めて徐々に時間を長くしていきます。
足の底やふくらはぎが痛くなったら外してください。
３週間くらいつけると慣れてきます。

靴はワンサイズ大きめのスニーカーが良いでしょう。

■ハムストリングのストレッチ
変形性膝関節症の運動としては大腿四頭筋のトレーニングが必要ですが、
ハムストリングは硬く短くなりがちの筋肉の為、大腿四頭筋が強くなりハムストリングが硬く短くなると膝関節の摩耗が生じて悪くなるリスクがあります。
よって膝の動きをよくするためにも反対側のハムストリングを柔らかくしておく必要があります。

ストレッチのやり方は当院にてお伝えします。

■減量
物理的に体重が減れば膝への負担が減りますので運動や食事制限などで減量をおススメします。

■膝装具
膝装具を付けることで膝の不安定性を軽減したり痛みを軽減させる効果があります。

このように日常生活の中で工夫をすることが出来ます。

それでも辛くてしょうがない場合には以下の方法もあります。

■副腎皮質ステロイドの関節内注射
副腎皮質ステロイドの関節内注射というのはステロイドと鎮痛剤を50％づつの割合で混ぜたものを注射すると劇的に痛みが無くなります。
もちろん変形は治りませんが腫れも引くので効果があるのですが感染やステロイド関節症などの副作用があります。

ステロイドというのは代謝を促すものです。
代謝というのは古いものを壊し(異化)、新しいものを作ること(同化)ですがステロイドを打つと異化と同化が両方高める効果があります。
ということは使われているものはより大きく、使われていないものはより小さくなります。

変形性膝関節症で辛い方はあまり運動が出来ていないため、
膝の骨は使われていないのでステロイドを打つことでどんどん壊されてしまいます。

骨がもろくなってしまいます。
ステロイドをやめてもすぐに代謝が下がらないのも厄介なところです。
鎮痛剤も入っていて感覚も麻痺しているので無理な動きをしてしまうことで骨組織が破壊されるケースが増えます。

このことをステロイド関節症と呼びます。

よって副腎皮質ステロイドの関節内注射は米国リウマチ学会の指針で年に４回に制限されています。
日本では２週間以上間隔をあけるようになっています。
(日本の基準は世界的に常識外れといわれています)

■手術療法
手術は今までご紹介した対応でもダメな場合の最終手段です。
その状態によって手術方法も変わるので説明します。

１、破壊が少なく嵌頓症状がある場合はデブリドマン。
２、若年者で変形が関節全体に及んでいない場合は骨切り術。
３、６０歳以上で末期患者の場合は人口関節置換術。

となります。

１、デブリドマン(創傷清拭)
デブリドマンというのは内視鏡で関節の中にある壊死部分や異物を取り除く手術です。
具体的には滑膜切除、半月板トリミング、骨棘切除などがあります。

２、骨切り術

楔形に骨を切断し負担を軽減させるように埋め込む手術です。

⇒詳しくはこちら

３、人口関節置換術
股関節ほど普及をしていませんが膝関節症にも使われる手術です。
しかし、現在の技術では完全屈曲はできないのが現状です。(90°以上曲げるのが困難)
なぜなら接触ポイントの前後動が人工的には高度過ぎて作れないためです。

デメリットもあります。
ポリエチレンが摩耗したりコンポーネントがゆるんだり、
再置換術が困難なことと感染症や肺塞栓症のリスクもあるからです。

人口関節置換術については股関節の章で説明しております。
⇒詳しくはこちら

当院はご予約優先制にしております。
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もちろん臨機応変に対応をするようにしておりますが、
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